ゆっくり正確に動作する

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Mario HoferによるPixabayからの画像

あなたはゆっくり正確に動作することができますか?

例えば、バスケットボールを熱心に取り組んでいるのなら、ゆっくりとフリースローが打てますか? 長年、楽器演奏を練習しているのなら、ゆっくりと正確に演奏できますか?

このページは、陸上短距離の小池選手とミュンヘン・フィルに刺激された、「ゆっくり正確に動作する」ことについての雑感です。

素早く動作することの見映えは、すぐに魅了されます。でも、ゆっくり正確に動作することは、熱心に取り組んでいるものであっても、あまり気にかけないのではないでしょうか?

ゆっくり正確に動作できるように取り組むことが、動作の精度を向上させる正しいやり方だと感じています。

最後までご覧になって、あなたの参考になりましたら幸いです。


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小池選手

まさか、陸上100m競技で、9秒台を記録する選手が次々と現れる時代がホントに来るとは、思っていませんでした。小池選手おめでとうございます。

陸上短距離の小池祐貴(住友電工)が20日、ダイヤモンドリーグ・ロンドン大会の男子100メートルで日本歴代2位タイの9秒98(追い風0・5メートル)をマークした。9秒台に突入した日本選手は、今年6月に9秒97(追い風0・8メートル)の日本記録をマークしたサニブラウン・ハキーム(米フロリダ大)、2017年9月に9秒98(追い風1・8メートル)を出した桐生祥秀日本生命)に続いて3人目。

小池祐貴、100Mを9秒98 日本男子3人目の9秒台 | 朝日新聞デジタル から引用

さて、小池選手は高校から陸上を始め、著しい成長曲線を描いていることで有名です。

特別な存在ですが、特別異色な練習も有名でしょうか?

昨年6月から走り幅跳びで84年ロス五輪7位の臼井淳一氏(60)の指導を受け、メニューを一任する。決められているルールは「全力疾走の禁止」。最大でも「マックスで95%」(臼井氏)。6割程度で走る練習を繰り返し、正しい接地、体の動き方を染み込ませた。「遅く、正確に走るのは難しい。スピードを出して練習すると、感覚的な細かい部分をごまかせると気が付いた」と小池。この1年で自己記録は0秒35伸びた。遅く走り、速くなった。

新ヒーロー小池祐貴「遅く走る」臼井氏教えで急成長 – アジア大会 – 陸上 | 日刊スポーツ から引用 赤は追記

わたしは陸上競技の経験がありませんので、難しさの感覚が今ひとつ理解できていないかもしれません。

しかし、100mが「短距離の長距離」と言われる感じは分かります。実際、わたしにとって30mから先は、未知の領域です。

言い換えると、わたしは30mから先は加速できません。トップスピードを維持して疾走することもできません。細かい部分でバランスを崩して失速します。

さて、目的のスピードより遅くした練習で、正確さを追求することに価値はあるのでしょうか? 特別な存在である小池選手以外にも、効果が期待できるのでしょうか? 

わたしが速く走りたいがために「ゆっくり正確に動作する」練習をしても効果があるのでしょうか?

ミュンヘン・フィル

名門ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団は、よく「澄んだ音」と表現されます。「澄んだ音」の鑑賞には、ギュンター・ヴァント指揮のアントン・ブルックナー交響曲8番をオススメします。

でも、ブルックナーに馴染みが無ければ、それが音楽には感じないでしょう。

しかし、100回聴く覚悟があれば大丈夫です。CDをかけ続ければいいのです。そうすればある時、急に美しい交響曲が聴こえてくることでしょう。とても不思議なブルックナーなのです。

100回聴くのは少々乱暴で、多くのいざないでは交響曲4番から始めて7, 8, …の順番で勧めています。

ブルックナーが苦手な人のためのブルックナー講座【補講】」など多くの記事がありますので、この機会にアントン・ブルックナーの変人ぶりを含めて愉しんでいただければと思います。

セルジュ・チェリビダッケ

セルジュ・チェリビダッケ(Sergiu Celibidache, 1912年7月11日 – 1996年8月14日)は、ルーマニア生まれで、ドイツで活躍した指揮者・作曲家です。

相当な毒舌で知られていて、ミュンヘン市当局は他の指揮者(クラウス・ウムバッハ)への批判を金で黙らせたとされる。また、カール・ベームが晩年にミュンヘン・フィルに客演しようとした際、チェリビダッケの毒舌(チェリビダッケはベームを「芋袋」「ドンゴロス野郎」と呼んでいた)を耳にし、それを演奏契約解除の通告と見做して出演を取りやめた、という逸話も残っている。反面、ベームが病気のため指揮できなくなったロンドン交響楽団の演奏会をわずか1日のリハーサルで引き受けるなど、その本音はよく分からない。かつてチェリビダッケの毒舌(カラヤンはじめ他の指揮者を批判)が新聞の紙面を賑わせた際には、見かねたカルロス・クライバーが天国にいるアルトゥーロ・トスカニーニからの手紙という形をとり「ブルックナーは”あなたのテンポは全て間違っている”と言っています。天国でもカラヤンは人気者です」とユーモアに託した反論のテレックスを打ったということもあった。

Wikipedia から引用

クラシック音楽を愉しんでいる人は、こうしたくだらない逸話も愉しんでいます。

世界的に有名な指揮者は、ほぼ全員がエゴイストと偏屈者です。紙一重ではなくそのものです。でもなぜか、類いまれな才能だけではなく、いろんな面が多くの人に愛されています。

さて、「澄んだ音」と表現されるミュンヘン・フィルは、セルジュ・チェリビダッケに鍛えられたと評価されることが多いです。

チェリビダッケの特徴は、驚くほど遅いテンポなのです。

ゆっくりと演奏させられるので、ミュンヘン・フィルの演奏家にとっては細かい部分が誤摩化せないので鍛えられたと言われています。

オススメしたCDがギュンター・ヴァント指揮であるのは、チェリビダッケ指揮では遅過ぎて愉しめないかもしれないと思ったからです。もちろん、チェリビダッケ指揮のものも評価が高いです。

1990年の来日コンサートは、オススメの1つです。

ゆっくり正確に演奏することで、鍛え上げられたミュンヘン・フィルをお楽しみください。

余談ですが、このような同曲異演(同じ曲の違う指揮者やオーケストラの演奏)を愉しみ始めたら、ブルックナーだけで何十枚もコレクションすることになるでしょう。

それは、とても楽しいコレクションです。

毎月大量に供給されるクラシックの新譜は、そのほとんどが19世紀までの名曲の、何千回目か何万回目かの録音である。若手指揮者の『運命』初録音であったり、巨匠指揮者による3度目か4度目の『運命』だったり、大昔に死んだ指揮者の録音が発掘された『運命』だったりもする。そもそもなぜクラシック音楽というジャンルはこんなふうに同じ曲ばかり録音しているのだろう?

だからクラシックは嫌われる?Part.2 ≪同曲異演盤の功罪≫ | edy-classic から引用

ついでですが、幻の名盤(海賊盤)が、なぜか売っています。入手困難な名盤で、わたしも苦労して手に入れました。

おわりに

小池選手とミュンヘン・フィル、二つも例があるのですから「ゆっくり正確に動作する」価値があるのは明確です。

多くの練習では、どうしても「速く!速く!」となりますが、むしろ「速く動作する」ことを封印して、「ゆっくり正確に動作する」に専念する時期が必要なのかもしれません。

バスケットボールの練習では、普通のドリブルやチェストパス、リバウンド時のボールのつかみ方さえも「ゆっくり正確に動作する」意識で、スキルを分解して見直すことに価値があるかもしれません。

わたしの穿った見方かもしれませんが、フリースローが苦手な人は、練習のときからフリースローを素早く打って、細かい部分を誤摩化しているように感じます。

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