日本アンチ・ドーピング機構の高校生向け冊子

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Tania DimasによるPixabayからの画像

公益財団法人 日本アンチ・ドーピング機構が提供している、「アンチ・ドーピングを通して考える -スポーツのフェアとは何か-」というテーマの冊子をご存知でしょうか?

私たちが守りたい大切なスポーツの価値の基盤 ~努力するからこそ得られる本当の勝利

スポーツを通して、何か得られたものはありますか?
答えは人それぞれ違うと思います。
スポーツを通して、ルールを守ることの大切さ、チームワークの大切さなど多くのことを学び、また一生思い出となるようなすばらしい経験を持ち、スポーツの価値を感じたことはないでしょうか。

自分を信じて最善の努力をし、懸命に勝利を目指そうとすること-Excellence
仲間を信じること-Friendship
対戦相手や仲間を尊敬すること-Respect


-これらは、国や国籍、時間の経過を超えて尊重されている、スポーツの価値の基盤。みなさんが決められたルールに従い、全力でスポーツに打ち込んできたからこそ、得られたものです。

仮に、スポーツを通して得られたスポーツの価値が壊されることになったら、どのように感じますか? 結果や勝利だけにこだわり、ルール違反する人がいたら、どのように思うのでしょう?

「フェア」をキーワードにしてスポーツの価値について考えるため、『アンチ・ドーピングを通して考える-スポーツのフェアとは何か-』の教材が完成しました。

アンチ・ドーピング活動を学ぶことを通じて、みなさんがスポーツに対してどのように向き合い、スポーツを通してどのような存在となるべきか、目指すべきかについても、考えてみましょう。

説明ページ から引用

PDFで提供されている冊子は、下記の構成で49ページあります。

第1章
スポーツの精神・価値
第2章
スポーツ共通の全世界的なルール-スポーツの固有の価値を守るアンチ・ドーピング活動の推進-
第3章
競技スポーツをする人が注意すること-医薬品とサプリメント-

高校生の年代を対象として、指導者に使って欲しい教材のようです。

冊子をざっと一読したのですが、オトナの私にはしっくりこない内容です。高校生には理解できるのでしょうか? わたしの想像では、高校生にもしっくりこないのではないかと。あるいは、読後には分かった気がするのだけど、実際の問題に直面すると戸惑うのではないでしょうか。

難しさの一つは、個々の競技種目を扱っているのではなく、スポーツという括りで問題提起していることではないでしょうか?

例えば、「ロンドン・オリンピックの女子バドミントンでの無気力試合(無気力プレー)」に触れているのですが、若い人には考える材料になるのでしょうか? オトナの私にはなりません。

無気力プレーは、難しい問題です。NBAのレギュラーシーズンでは、試合の最後はたいてい無気力プレーです。

スポーツでは「勝利を目指して最善の努力をする」のが正しいです。しかし、実際には少し異なります。論理的に勝てない状況(どんなに奇跡的なプレーが連続したところで、絶対に逆転できなくなった状況)になれば、無気力プレーをするのです。この状況での無気力プレーを問題にする人はいないでしょう。

戦況を大局的に理解できない子どもたちは、試合が終わるまで最善を尽くせるかもしれません。そのように指導するコーチもいるでしょう。しかし、オトナには戦況が大局的に理解できます。それなのにバカみたいに、最後まで最善を尽くすなんて誰も求めていないプレーです。

こうした無気力プレーを含めての文化が、競技の構成要素であるし、リーグや地域の文化だと思うのです。

ですから、スポーツという括りで問題提起しても、曖昧になり過ぎて考えるのが難しいのではないでしょうか。

そもそも、取り上げられた「ロンドン・オリンピックの女子バドミントンでの無気力試合」は、失格にしたことで、正義が行われたように誤解されていますが、実は法的には曖昧だったらしいです。

スポーツ仲裁裁判所(CAS)の事務局長が話されているのは,確かにそのバドミントンの8選手は無気力試合を行い,それを理由として競技から失格となったのですが,その失格に本当に根拠となるルール(規則)があったのだろうか,という問題なのです。

オリンピック・無気力試合と失格 から引用

引用元の記事は、倫理と規則について、分かりやすく説明してくれています。

話を元に戻しまして、冊子を読み進めると、歴史的な出来事で倫理上の題材を提示してくれるのですが、「これまでの倫理的な問題を通して、アンチ・ドーピングを考える」になってしまい、「アンチ・ドーピングを通して考える -スポーツのフェアとは何か-」ではないと思います。

とはいえ、若い人がこのような冊子により、自ら疑問を感じて、考えたり調べたりすることは、とても有意義なことでしょう。お時間がありましたら、冊子をご覧になってはいかがでしょうか。

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