知人から「バイクはゴムタイヤだから、落雷しないと思い込んでいる人がたくさんいる」と聞いたので、調べたところ、驚くことにたくさんいます。調べた結果を元に、思い込みを表現すれば次のようになるでしょう。
- バイクや自転車はゴムタイヤだから、落雷しても感電しないと思い込んでいませんか?
- バイクに落雷しても、ジャンプして接地していなければ感電しないと思い込んでいませんか?
- 雷に追いかけられても、バイクのスピードで逃れられると思い込んでいませんか?
実際に落雷で命を落としている人々がいますので、事実として落雷します。落雷で絶命しなくても、運転操作が絶たれるので、事故死する可能性もあります。
本記事を最後までご覧になり、バイク乗りの落雷被害が無くなることを願います。
迷信?
できれば他の記事と合わせて「神話のウソ〜」というタイトルにしたかったのですが、少し異なると思い「迷信〜」としました。迷信の意味は次の通りです。
俗信のうちで、合理的根拠のないもの。一般には社会生活上実害を及ぼし、道徳に反するような知識や信仰をいう。
大辞泉から引用
「バイクは落雷しないから安全!」なんていう誤解が蔓延したら、それこそ社会生活上、実害があります。
電気の知識が邪魔している?
もしも電気の知識により、誤解を生じているのなら、一旦電気の知識を捨てて考えれば、迷信から解放されるかもしれません。
雷の電気的特性のことは、一旦忘れて、「雷」のことを電気と関係ないカミナリと考えてみます。すると、「稲光を見たことがある」という経験だけで、バイクに落雷することがわかると思います。
- カミナリが、稲光とともに空から地上へ到達するのを見たことがある
- だから、バイクであろうと何物であろうと、カミナリが到達する危険がある
- 空から地上に到達するのだから、バイクがジャンプしていようが関係なく、カミナリが到達する危険がある
また、稲光の猛烈な速さを見たことがあれば、乗り物のスピードなど止まっている程度であることが直感的に分かるでしょう。
電気安全作業のための保護具
ゴムタイヤの絶縁性能はさておき、電気工事で使われる保護具について見てみれば、誤解が解けるかもしれません。規則では、保護具の耐電圧性能として下表の値の電圧に1分間耐えることが定められています。電気安全作業のための保護具 | 公益社団法人 日本電気技術者協会 から転載します。
絶縁用保護具の種別 | 電圧(V) |
交流の電圧が300Vを超え600V以下である電路について用いるもの | 3,000 |
交流の電圧が600Vを超え3,500V以下である電路または直流の電圧が750Vを超え3,500V以下である電路について用いるもの | 12,000 |
交流の電圧が3,500Vを超え7,000V以下である電路について用いるもの | 20,000 |
高々2万ボルトの世界です。我々が利用している電気が、空中を飛んで何かに損害を与えることは、日常ではありません。しかし、雷の電気は比較にならない高電圧と大電流なのです。
雷の電気
念のため、雷の電圧と電流を転載します。当然ですが、電気安全作業の保護具では絶縁になりません。
落雷時の電圧は200万~10億ボルト、電流は1千~20万、時に50万アンペアにも達する。この高電圧と大電流が人を死傷させ、この大電流によってもたらされる、プラズマが発生するほどの熱(ジュール熱)が建物などに被害を発生させる主因である。
Wikipedia から引用
では、なぜ車は安全なのか?
車が安全なのは、落雷しないのではなく「落雷しても中の人が安全である」ということです。そして、「ゴムタイヤを装着しているから、電気を通さなくて安全」なのではありません。
理解するためには、「ファラデーのかご」を理解する必要があります。
ファラデーのかご
落雷に対して車が「ファラデーのかご」の役割をするため、中の人が安全なのです。
ファラデーケージ(英語: Faraday cage)とは、導体に囲まれた空間、またはそのような空間を作り出すために用いられる導体製の籠や器そのものを指す。導体に囲まれた内部には電気力線が侵入できないため、外部の電場が遮られ、内部の電位は全て等しくなる。また、内部に電荷を持ち込むと、電荷はファラデーケージの表面に分布しようとするため、ファラデーケージの側に移動する。イングランドの物理学者マイケル・ファラデーが発見した性質であり、ファラデーの籠、ファラデーシールド(Faraday shield)とも呼ばれる。
Wikipedia から引用
動画をご覧になるのが、最も分かりやすそうです。下記の動画は「2011年の実験「ファラデーのかご」実況中継です。本実験は科学技術体験活動アイデアコンテストにおいて1995年科学技術庁長官賞を受賞しました。」とのことです。
避雷針は何をしているか?
避雷針は現在も改良が進められている保護具です。
地面と空中との電位差を緩和し落雷の頻度を下げ、また落雷の際には避雷針に雷を呼び込み地面へと電流を逃がすことで建物などへの被害を防ぐ。そのため、「雷を避ける針」という表記ではあるが、実際には必ずしも雷をはねのけるものではなく、字義とは逆に避雷針へ雷を呼び寄せる、いわば「導雷針」ともなる。
Wikipedia から引用
引用元には、歴史や現在の改良など広い範囲の話がよくまとまっています。
しかし、雷からの保護を約束してくれるものではありません。
屋外地上部で埋設標などを頼りに、避雷針システムより十分な距離を確保したつもりでも、避雷針に接続されている導線、まして接地極の大きさ、広がりなどはおよそ見た目にはわからず、安全ではないので、雷に遭った時には、屋外に形成される避雷針の防護範囲に避難するのではなく、避雷針の防護範囲内に収められている建物内に直ちに避難する。
Wikipedia から引用
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