両側性、片側性、クロスエデュケーション

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Ralf KunzeによるPixabayからの画像

この記事は、両側性/片側性/クロスエデュケーションについての雑感です。

観察できていることは単純なのに、有効な応用には、まだ結びついていません。

本記事を最後までご覧になり、あなたの参考になりましたら幸いです。


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右利き?左利き?

友人のバスケットボールプレイヤーで、右利きなのに左手のミドルシュートの方が”洗練された動き”に見える人がいます。

右手で練習を積み、使い物になるのは右手なのに、左手の方が”洗練された動き”に見えるのはなぜなのでしょう? そして、左手でもシュートの成功率は悪くありません。なぜ、このようなことが起きるのでしょう? 左手では大して練習していないのに。

もしかしたら、彼が双子で”本当は左利き”だからかもしれません。しかし、練習を積んでいないのですから、疑問は解消できません。

プレイヤーの内の何割かは、利き手でない手でも”初心者よりはずっとマシな安定したフォーム”でシュートが打てます。人によっては、きれいなフォームでこなします。ほとんど練習していないのに謎です。

脳を介して、利き手からもう一方へ”劣化コピー”されるのでしょうか? 不思議な現象です。

両側性、片側性

東京大学教授、石井直方氏の解説によれば、

両側性の筋力発揮をするときは、片側ずつ筋力発揮をしたときの足し算よりも、合計が小さくなってしまうという生理学的な現象があることです。これを専門的な言葉で「両側性欠損(バイラテラルディフィシット)」といいます。

 例えば、左右の手で握力を測り、それぞれ30kgという数値が出たとします。そこで両手同時に握力計を握ると60kgという値が出るのではないかと期待してしまいますが、実際にはそうならず、左右の合計の90%程度の筋力になってしまいます。

その原因は解明されていないが、両側を使うことが脳にとって負担になる。あるいは、人間の身体が非対称(重たい肝臓は右にある)であるように、弱い側に揃えるような力の発揮になるのかもしれないと推測しています。

しかし、調査の結果、トレーニングを積んでいる国際レベルのボート選手の場合、両側性欠損の度合いが小さかった。つまり、両側性トレーニングを積むことによる特徴として、左右の不均衡を均一にする働きがあると解釈しています。

つまり、左右の筋力に差がある人の場合、片側のトレーニングで解消しようとしても左右の差が広がる心配があるし、片側のトレーニングによる負担で故障する危険が増すかもしれない。なので、片側のトレーニングを積むよりも両側性トレーニングを増やした方が良いでしょう、とのことです。

直感的には、「弱い側のトレーニングを徹底してやる!」なのに、そうではないことが示されています。

ところで、跳んだり走ったりする場合に、左右差が生じていたらどうすればよいのでしょうか? ”両足跳びする”ではありませんよね・・・

機能的な動作も対象として考えると、さっぱり分からなくなります。

クロスエデュケーション(Cross Education)

クロスエデュケーションの現象は、医療従事者であっても理解していない人が多いと予想しています。

Cross Education、またの呼び方をContaralateral Training Effectなどと言います。
これは片側性のトレーニングを行った際に、逆側の同じ筋肉の筋力が向上する現象のことを言います[1]。

【第77回】右を鍛えると左の筋力も向上する?Cross Educationについて から引用

 メカニズムとしては ”神経系の適応” が知られており、これは脳・神経系と筋肉の連携が新たに構築されることです。

期待される新たなリハビリ方法 〜クロスエデュケーション〜 から引用

調査報告では、トレーニングをした側の筋力の向上率の約1/3がトレーニングをしていない側にも見られるらしいです。

この効果は上肢よりも下肢のトレーニングで大きく、アイソメトリックなトレーニングよりも動的なトレーニングで大きい可能性も示唆されています。

【第77回】右を鍛えると左の筋力も向上する?Cross Educationについて から引用

「アイソメトリックより動的トレーニング」はより脳・神経系が関わりそうなので納得できますが、「上肢よりも下肢」はまったく理解できません。

【第77回】右を鍛えると左の筋力も向上する?Cross Educationについて」の執筆者である佐々部孝紀(ささべこうき)さんは、ケガなどで片側のトレーニングが出来ない状況における、応用の仕方を”個人の考え”と前置きした上で提示してくれています。

(1)なるべく低ボリューム、高強度で行う(筋肉量の差を広げたくないので)
(2)挙上スピードはなるべく速くする(そのほうがCross Educationの効果が高いことも報告されています)
(3)患側のトレーニングが行えるようになったら、健側のトレーニング量は少なくする、または一時的に中止する
(4)患側のトレーニングは筋肉量を増やすような中強度、中~高ボリュームのものを低速度で行い(安全で、健側へのCross Education効果が小さい)、徐々に高強度にシフトする

このように(1)(2)を行っておくことで、(4)のときに患側にかけられる負荷が増加し、効率的に失った筋肉量を取り戻せると考えられます。(筋肉以外の組織が運動の制限になっていたら負荷をかけるのは難しいですが)

【第77回】右を鍛えると左の筋力も向上する?Cross Educationについて から引用

全体の考えに、もちろん異論はありません。(1)(2)についても納得です。しかし、(3)(4)については、「両側性、片側性」で紹介した話に従えば、「患側に合わせた強度で、両側性トレーニングを行う」になると思うのです。

しかし、機能的な動作についてはどうなのでしょう? 健側を鏡を通してみることで、患側が動作しているかのように錯覚させるミラーセラピーが紹介されています。

 そして、このクロスエデュケーションに加えて、鏡を用いてトレーニングしている自分の手足を見る、ミラーセラピーというものも注目されています。鏡を使用することで、クロスエデュケーションの効果が高まるという報告もあります。

期待される新たなリハビリ方法 〜クロスエデュケーション〜 から引用

まだまだ、解明されていない技術なので、実際の方法論までたどり着いていないのが残念です。しかし、分かっていることから察するに”いかに適切に脳を騙すか?”がカギなのでしょう。脳を騙すことさえ出来れば、効率的なトレーニングやリハビリテーションに応用できることを窺わせます。

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