- 大事な場面で思い通りのプレーをしたい!
スポーツをしている人なら誰しもそう望むと思いますか? ホントですか? 「思い通りのプレー」って何ですか?
わたしにとっては、イップスや職業性ジストニアについて考えると「思い通りのプレー」の深みにはまります。
でも、そもそもイップスも職業性ジストニアも定義が今ひとつはっきりしません。まだ解明されていないことだから仕方が無いのかもしれませんが。
この記事は、「思い通りのプレー」についての雑感です。
職業性ジストニア
職業性ジストニアは、Wikipediaで「書きかけの項目」です。
ジストニアとは脳の病気であり、筋肉・骨・神経など肉体は正常であるにも関わらず、体の一部が思い通りに動かなくなる症状の総称である。イップスとも重複した部分がある。
Wikipedia から引用 赤は追記
MRI等で脳自体を調べても、異常は現れない。
研究段階であり、わかっていないことも多い。
(途中省略)
今までできていた作業ができなくなる。出来にくくなる。
例えばテレホンアポインターが「もしもし」が言えなくなる。
ギタリストの指が思い通りに動かなくなる。
パソコン入力業務の人がパソコン入力で指が思い通りに動かなくなる、など。
一方、イップスの項目には、次の記載があります。
イップス (yips) は、精神的な原因などによりスポーツの動作に支障をきたし、突然自分の思い通りのプレー(動き)や意識が出来なくなる症状のことである。本来はゴルフの分野で用いられ始めた言葉だが、現在ではスポーツ全般で使われるようになっている。
Wikipedia から引用
イップスと職業性ジストニアは、似ているけれども、同じとは言えないと思います。定義が異なるので。
イップスも職業性ジストニアもまだ良く分かっていない段階で、原因も対処法も解明されていません。
「思い通りのプレー(動き)」って何?
「思い通りの動き」って何でしょうか? 表面的には、疑う余地のない表現ですが、よくよく考えると分からなくなります。
まず「思い通りの動き」は、本人にしか分からないものです。
一方、例えばバスケットボールのシュートは、細部を意識しなくても「正しい動作 ≡ 思い通りの動き」ができるように、繰り返し練習して身に付けたものです。
だから、一度身に付けたスキルが「思い通りのプレー(動き)や意識が出来なくなる症状」になったときには、「思い通りの動き」を意識しようとしても、その本人にとって「思い通りの動き」がよく分からなくなっているのではないでしょうか。
すると、イップスの定義そのものが矛盾を含んでいるのです。
「思い通りのプレー(動き)や意識が出来なくなる症状」がイップスの定義なのに、イップスになるような動作は、意識せずに動作できるほど繰り返し練習して身に付けた動作なので、そこに「思い通り」も「意識」もすでに存在していない。
「思い通り」も「意識」も存在していない段階で、何も問題を生じない人と、イップスになる人がいるということなのでしょう。
レブロン・ジェームズのFT
レブロン・ジェームズのFT成功率が良くないことは、有名でしょう。
「レブロン・ジェームズのフリースロールーティンの変遷と苦闘」では、FT成功率が低いことで何が起こっているか?が書かれています。また、心理的な要因で成功率を下げているとしています。
とても面白い記事ですので、ご覧になることをオススメします。
わたしは、この記事の主旨に同意します。なお、記事では「イップス ≡ 職業性ジストニア」としていますが、わたしは違うものだと想像しています。
レブロンのFTは、失敗したときであっても「思い通りの動作ができたけど失敗した」ように見えることが多いです。少なくともバークレー親分のドライバー・ショットのように端から見て奇妙な動作は見当たりません。
レブロンは、高確率でFTを決めたシーズンは無いと思います。「出来ていたことが突然出来なくなる」のが(狭義の)イップスだとしたら、レブロンのFT成功率が良くないのはイップスではないでしょう? 「出来ていたこと」とは言えないのだから。
「練習でどんなに上手くできても、本番での実績がない」ことまでイップスに含めてしまうと、対象が広範囲になり過ぎて対処法の探求に支障があるように思います。
FTは細部を意識しても構わないプレー
試合中のシュートで、動きの細部に気を配りながらシュートすることは出来ません。いろいろなことを観察して考えなければなりません。(だからシュートの細部を意識することはできません)
- デフェンスの手にボールが掛からないか?(ブロックされないか?)
- シュートを打たずに、ドライブに切り替えるべきか?
- シュートを打たずに、インサイドの選手にパスすべきか?
- ほん少し待てば、リバウンドポジションが良くなる選手がいるか?
- ガードにボールを返して、逆サイドに展開すべきか?
フリースローでは、ディフェンスはいません。インサイドでポジションを取ろうとする味方もいません。いろいろなことを観察する必要がない状況でシュートを打ちます。シュートそのものに意識を持っていって構わないプレーです。
スティーブ・ナッシュは、とても優秀なシューターなので、もっと無造作にフリースローを打っても良さそうなのに念入りなルーチンを行います。
おわりに
「イップス」とあだ名を付けたくなるような友人がいます。(冗談ですよ。イジメになってしまいます)
とてもパフォーマンスの良いプレイヤーなのですが、大事な場面で失笑したくなるような凡ミスをする傾向があります。
でも、彼は、知る限り大事な場面を見事なプレイで切り抜けたことはないのです。だから、イップスではないと思うのです。「出来ていたこと」とは言えないのだから。
彼と話して分かったことは、「試合における勝負の駆け引き」に興味があるのではなく、「運動量の多いバスケットボールをすることで精神的浄化作用を楽しんでいる」みたいなのです。だから大事な場面についての心理的な準備はしていないと思います。
だとしたら、大事な場面で云々なんて余計なお世話でして、このままそっとしておくのが正しい付き合い方なのかもしれません。
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