運動学習

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Anastasios KiotsekoglouによるPixabayからの画像

常々、次の二つの習得に違いがあるのかが、気になっていました。

  • スポーツの新しい動きの習得
    • 例えば、バスケットボールにおける、新しいムーブの習得
  • リハビリテーションにおける機能回復
    • 例えば、脳卒中で片麻痺、回復期の歩行リハビリテーション

「今できない動作を覚える」という点では同じですが、前者は「これまで、できなかったことの習得」、後者は「以前、できていたことを再度できるようにする」点で異なります。そのため、直感的な印象では、二つの習得は異なることに感じていましたが、なぜそう感じるのかを、残念ながら説明できません。

「習得方法は、本質的に異なるのか?」ということが分かりません。

簡単に調べても、一般向けに分かりやすい情報を公開しているものは、なかなかありません。しかし、どうやら二つの習得は同じものとして捉え、調査・研究しているところが多いと思います。


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関連記事(追記)

先に、次の記事をご覧になった方が分かりやすいと思います。

運動学習のメカニズムと作業療法 – 広島大学 学術情報リポジトリ

広島大学保健学ジャーナル Vol. 1(1):22~28,2001の「運動学習のメカニズムと作業療法 – 広島大学 学術情報リポジトリ」に、この問題に対する解説を見つけました。しかし、一般向けの解説というより、専門家向けの論文に感じます。目次を転載します。

はじめに:作業療法と運動学習

学習と記憶
1.定義
2.学習の分類
(1)非連合的学習
(2)連合的学習
3.記憶のメカニズム
(1)短期記憶と長期記憶
4.学習に伴う中枢神経系の変化

治療への示唆
1.いったん悪い癖がつくと治りにくい:記憶痕跡の回路:エングラム
2.必要な練習回数はどのくらいか?
3.メンタル・プラクティス(mental practice)
4.結果のフィードバック:Knowledge of Results
5.ブロックト・オーダー(blocked order) と ランダム・オーダー(random order)(Swanson,1991)
6.観察による学習
7.Held & Hein の研究:認知学習も運動優位で行われる

まとめ

運動学習のメカニズムと作業療法 – 広島大学 学術情報リポジトリ」 から抜粋

この論文では、動作を身に付ける(神経回路の構造的変化を起こす)ためには、かなりの反復回数が必要だとしています。

「1万時間の法則」(天才! 成功する人々の法則)で有名なように、何かを本当に身に付けるのは、時間が掛かります。なお、1万時間という時間の真偽はあやしいですが、膨大な時間が必要なことには変わりありません。この論文の中では、掛かる時間ではなく、反復回数に言及し、実例を紹介しています。以下に抜粋します。

活動練習者反復練習回数
葉巻作り
若い女性葉巻300万本
ウァイオリン弾き3歳児250万小節
歩行6歳迄300万歩
行進男性80万歩/6週間
バスケットボール運動選手100万バスケット

「100万バスケット」って何でしょう?例えば、3ptを100万回成功(試投?)させるのでしょうか。週に300本試投できても、100万回試投するには60年以上掛かります。社会人には実現困難な反復回数です。

具体例が提示されると、(すでに知っていて、分かっているつもりでも)気が遠くなるほどの反復回数になることを、感じさせられます。

この論文では「学習者自身が考える事,学習者が能動的に問題解決プロセスを経験することが,学習にとって重要であるらしいということも示唆された」と結んでいます。

リハビリテーションにおける運動学習

日本医事新報社がQ&Aの形式で、リハビリテーションとスポーツ・トレーニングの類似と相違を説明しています。しかし、残念ながら「以前、できていたことを再度できるようにする」という観点での説明はありませんでした。

リハビリテーションにおける運動学習|Web医事新報|日本医事新報社
リハビリテーションにおける運動学習

機能回復と熟練

機能回復と熟練について、同じと捉えられることは興味深いです。

ひとりで練習する

既に書いた、下記の記事もあてはまることになるのでしょうか。この記事では、主に「上達」を取り上げていて、「できる/できない」というレベルからの機能回復は考えていません。

反復練習

反復練習についても、既に書いています。その内容は、広島大学の論文を読んだ後、リハビリテーションについてもあてはまりそうな感じがします。

調子の良いときほど、徹底して繰り返し練習する

リハビリでそのまま適用しても良いものなのでしょうか。あまり調子が良くない日は、リハビリをさっさと切り上げ、調子がいいときは、ここぞとばかり徹底してリハビリするのでしょうか。

もちろん、実際に病院で行われるリハビリは、単位時間で管理されるスケジュールがあり、切り上げたり/徹底して行うことが容易でないことは承知しています。

オノマトペ

スポーツオノマトペについては、まったく何の問題もなく、リハビリテーションにあてはまる感じがします。もしかしたら、既に、意図して使われているかもしれません。

心拍数

既に、記事に書きましたが、心拍数を上げることが、脳の発達に影響することが分かってきたらしいです。しかし、リハビリでは、疾病のため、心拍数をあげられないのではないでしょうか。でも、もしも心拍数を上げられるのなら、よりリハビリの効果があることが期待できるのでしょうか。

とても興味がありますが、試すのが難しい問題です。

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