3ポイントラインをちゃんと引いて!

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Denise HustedによるPixabayからの画像

バスケットボールのコートを使用して、おかしなスリーポイントラインに出会ったことはありませんか?

0度近辺(エンドラインに近いところ)からスリーポイントを打ちたくても、狭過ぎて足が入らず立てない! あるいは、狭過ぎてラインを踏まずに立つのがやっと/つま先立ちでないと立てない/横向きでないと立てない・・・

プレイヤーは明るい人が多いし、バスケットボールはトラッシュ・トークが文化なので、「つま先立ちで打てばいいでしょ!」「横向きに立って足を開けば立てますよ!」「相手の3ptプレイヤーをそこに誘い込めばいいんです!」など、(どうしようもない、変えることができない現実だから)笑い飛ばしています。

しかし、とても深刻な事態で、競技レベルの成長を阻害している人為的ミスだと思います。公共のちゃんとした施設であっても目にする、おかしなスリーポイントラインは、まったく理解不能です。

本記事は、おかしなスリーポイントラインについて、誰かを非難するものではありません。現状はさておき、今後、正しく引かれることを願っての説明です


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おかしい?

例えば、球技において、意味の無いラインはありません。なぜなら、意味が無いのなら引かなければ良いからです。

スポーツは技術の進歩とともに、ルール改正を繰り返して成熟していくものだと思っています。しかし、ルール改正を取り入れるときには、おかしなことが起こることがあるのかもしれません。

この記事では、各所で見掛ける「おかしなスリーポイントライン」を紹介するとともに、正しく引いて欲しい理由を説明します。

おかしなスリーポイントラインは、場合により、利用されないラインになっています。これでは、選手も審判も共に煩わしいだけです

競技規則

まずは、競技規則を確認します。コートに関する規則なので、曖昧さはないので、解釈や判断のむずかしさはありません。

2-4-4 スリーポイントフィールドゴールエリア

チームのスリーポイントフィールドゴールエリア(図1・図3)は、以下のラインで区切られた相手チームのバスケットに近いエリアを除く、コートの全エリアをいう:

◦外側の縁までの距離がサイドラインの内側の縁から0.90mとなるようにエンドラインと直角に描いた2本の平行な直線
◦相手チームのバスケットの中心点から真下にフロアまで下りた地点を中心とする円周の外側までが半径6.75mの半円。エンドラインの内側の縁から半円の中心までの距離は1.575mとする。半円は2本の平行な直線と交わる

スリーポイントラインは、スリーポイントフィールドゴールエリアには含まれない。

バスケットボール競技規則 – JBA 10ページ「2-4-4 スリーポイントフィールドゴールエリア」から引用
「図1 コート全寸法」から抜粋
「図3 ツーポイント / スリーポイントフィールドゴールエリア」を引用

スリーポイントは、どのように使われるのか?

スリーポイントのルールが出来てから、もう長いこと経ちますが、近年ようやく、戦略の一部に出来るほど、使われるようになったと思います。

つまり、(成功確率が上昇した)スリーポイントによって、ディフェンスを広げることが出来るようになりました。ディフェンスが広がった結果、ペイントエリアのオフェンスが多彩になりました。

間違えている箇所

間違えている箇所は、競技規則で黄色いマーカの部分です。90cm(0.90m)を確保してくれていません。(何のためのラインを引いているのかをまったく考えずに、発注/受注しているとしか思えません

2-4-4 スリーポイントフィールドゴールエリア

チームのスリーポイントフィールドゴールエリア(図1・図3)は、以下のラインで区切られた相手チームのバスケットに近いエリアを除く、コートの全エリアをいう:

外側の縁までの距離がサイドラインの内側の縁から0.90mとなるようにエンドラインと直角に描いた2本の平行な直線
◦相手チームのバスケットの中心点から真下にフロアまで下りた地点を中心とする円周の外側までが半径6.75mの半円。エンドラインの内側の縁から半円の中心までの距離は1.575mとする。半円は2本の平行な直線と交わる

スリーポイントラインは、スリーポイントフィールドゴールエリアには含まれない。

バスケットボール競技規則 – JBA 10ページ「2-4-4 スリーポイントフィールドゴールエリア」から引用

間違いにより何が起きているか?

間違っているラインのため、緑色のエリアからはスリーポイントが打てない(あるいは、打ちにくい)です。

大雑把に言って、シュートは距離が長いほど成功確率が低くなります。ですから、ディフェンスはゴールの近くでシュートを打たれるよりは、なるべく遠くで打たせるように仕向けます。しかし、スリーポイントは通常の2点より多い(1.5倍も多い)3点なので、特別丁寧に守ります。

しかし、緑色のエリアからはスリーポイントを打たれないので、緑色の箇所を特別に警戒しなくて良くなり、守りやすくなります。緑色のエリアは、ディフェンスの視野に入らなくなることが起こるので、とても気を配って守る場所になります。スリーポイントが打てなければ、緑色の場所に気を配らなくて良くなるので、守りやすくなります。

「90cmなくても打てればいいのでは?」と考えているのなら、間違っています。緑色のエリアが90cmより狭くなればなるほど、綱渡りをするような繊細さで、移動とストップ、ボールのキャッチをしなければならなくなります

将来にわたって影響する間違い

ラインの引き間違いは見方を変えると、競技の複雑さから一部を削除して、単純な競技にしているとも言えるでしょう。競技スポーツは、同一のルールで競い合えることが特徴の文化です。それなのに、競い合うときに不利になる、単純化した環境を作っています

普段、間違ったラインで練習や試合をしているチームは、試合開始前に既に不利なので、とても不幸な環境と言えるでしょう。人為的ミスによる不幸な環境だと思います。特に将来がある若い人達には、正しいラインで切磋琢磨して欲しいです。

間違いの始まり

2011年、ルール改正

2011年のルール改正で、コートの大きさの規則が変わりました。下記のモルテンさんのサイトをご覧になれば、一目瞭然でしょう。

molten モルテンスポーツ事業本部
molten(モルテン)は、FIBAバスケットボールワールドカップや、UEFA ヨーロッパリーグをはじめとした公式試合球や公式用具に採用。バスケットボール、ハンドボール、バレーボール、サッカーなどの競技用ボールやホイッスル、カウンターなどの...

それまで、コートは縦横共に範囲のあった長さが、28m, 15mとなりました。しかし、学校の体育館では確保できないところがあったため、次のような決まりになっています。

‌・学校体育の場合は縦24m 〜28m、横13m 〜15mの範囲内で縦横バランスの取れたコートを使用する。

(「縦横バランスの取れた」って何ですか? 比率のことかな? それはさておき、)ところが、28m x 15mのコートが確保できない場合のスリーポイントラインに関する決まりは見つかりませんでした。

エンドラインに15mの確保

「エンドラインの15mを確保できなくなったために、間違ったスリーポイントラインを引いた」というのが、間違いの原因と予想されます。15m確保できないときにサイドラインから90cm確保すると、場合により旧スリーポイントラインよりゴールに近くなります。そのことを潜在的に嫌ったのでしょう。

もしかしたら、実は全国的に協議した結果、現在のおかしなスリーポイントラインになっているのかもしれませんが、確認できませんでした。

改修案

個人的な希望を優先度順に列挙します。

  • 15mを確保できるように体育館を改修する
  • 15mを無視して、90cmを確保する
    • ゴールに近くなって3ptの確率は上昇するかもしれませんが、コートが狭い分守りやすくなって、ディフェンスが不利になるとは限らないのでは?
  • サイドラインから90cmの直線を引かず、円周のラインだけ引く(試合は行えない練習用コート

90cmの幅にこだわるのは、(特に若い人達は)90cm幅でのステップを練習しなければならないためです。

せめて公共施設など、大会を行うような体育館では、ラインを引き直していただけないでしょうか? 現在の間違っているラインでは、利用されないラインになっている場合もあり、選手も審判も共に煩わしいだけです

失礼いたしました。

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