
この記事は、素人のわたしが調べてまとめた、膝蓋骨骨折についてのやさしい解説です。これだけまとまっているものは、他にないと思います。
先日とても残念なことに、もらい事故でチームメイトが膝蓋骨骨折を負いました。交通事故なのでいろいろと面倒な手続きがあるかもしれません。
ところで、1年前には友人のPGが、試合前のウォーミングアップ中に膝蓋骨骨折を負いました。骨折は身近なケガではありませんし、膝蓋骨骨折は骨折全体の1%という統計です。こうして身近な人が2人も膝蓋骨骨折を負ってしまったことに驚いています。
膝蓋骨骨折は、予後が良い(治った後の状態が良い)と言われています。しかし、復帰までに4〜5ヶ月掛かるケガですので、リハビリテーションが大変です。
膝関節はとても複雑な構造です。その一部である膝蓋骨は、膝関節を固定しても十分には固定されないので、治療を難しくしています。
本記事を最後までご覧になり、あなたの参考になりましたら幸いです。なお、わたしは医療従事者ではありませんので、記載内容についての責任はご容赦ください。
膝蓋骨骨折の原因
膝蓋骨骨折の原因は、下記の2通りあります。チームメイトは「直達外力」、PGは「介達外力」に該当します。
- 直達外力
- 転倒や交通事故などでぶつけることによる強力な外力によるもの
- 介達外力
- 大腿四頭筋が引っ張ることによるもの
「ヒトの筋力は自分の骨を折ることが出来る。だけど各種の抑制が働くので折れない。」という話を聞いたことがあります。「介達外力」は自らの力で骨折する例なのですね。
治療方法
治療の方法には、大きく分けて下記の2種類あります。
- 外科手術
- 保存療法
チームメイトもPGも膝蓋骨の転位がなかったので(骨折による骨のズレがなかったので)、そのまま固定する保存療法になっています。
膝蓋骨骨折に対する治療方法の選択として重要となるのは、
・膝関節伸展機構の破錠がないか
・転位はないか
の2点になります。通常転位のない骨折とは、
「3mm以下の骨折転位及び2mm以下の関節面の段差」と定義されています。つまりこれらの条件を満たしている場合に保存療法が適応となります。(途中省略)
保存療法が選択されるということは、もともと重症度が低く、軽症である場合が多いので、比較的予後は良好と言えるでしょう。
膝蓋骨骨折の保存療法に対するリハビリテーション方法は? から引用
多くの患者が、正座程度の関節可動域の獲得が可能であり、術前同様の歩行能力まで回復できる場合が殆どです。
外科手術は、手術方法により固定する期間が異なりますが、保存療法では、4週間程度の固定になります。
しかし、高圧酸素療法や超音波骨折療法を行うことで、固定している期間を短縮できます。高圧酸素療法と超音波骨折療法は、もしかしたらそれほど特別なものではなくなっているもかもしれません。実際、治療を受けられる病院がたくさんあります。
高圧酸素療法
高気圧酸素療法は、スポーツへの早期復帰の切札と期待されています。
下記の説明からは、この治療院の症例数が少なそうに感じます。
良く言われるのがお医者さんで言われた日数より2~3割位早く治る事もあるようです。
酸素カプセルと骨折の回復|酸素カプセル|浦安の整体 から引用
骨折を早く回復させる為には、酸素は寝ている間に殆ど消費してしまうので、体内の酸素量を満タンにしておく事が大切になります。
体内の酸素量が少ないと骨折患部には殆ど流れず、脳や内臓に流れ修復が遅れてしまいます。
ですので、出来る方は極力毎日、少なくても2~3日に1回は入った方が良いと言えます。
立派な設備を誇る東京品川病院ですが、治療費は分かりませんでした。設備に比例して治療費が掛かるのかもしれません。
高気圧酸素治療は、気圧を高めた部屋でマスクを使用して100%濃度の酸素を吸入し、体内に大量の酸素を送り込むことで、身体を回復させる治療方法です。
高気圧酸素治療室|部門紹介|東京品川病院 から引用
呼吸で得られる酸素量の10~20倍もの酸素を体内に取り込むことにより細胞が活性化し、ケガ等で損傷した組織の回復が早くなります。
(途中省略)
当院の治療装置は、多人数用装置(第II 種)で、最大8人まで同時に治療を行えます。
(途中省略)
健康保険の適応はありませんが、次の病態に効果があることが確認されています。
スポーツ外傷(肉離れ、靱帯損傷、打撲、捻挫、骨折など)の治癒促進
(途中省略)
2.5 気圧のコース
◆対象:主として整形外科領域(スポーツ外傷)
◆所要時間:約120 分
超音波骨折治療器
超音波骨折治療器は高価な設備ではないので、設備(といってもハンディタイプです)を備えている病院も多いと思います。
LIPUS(Low Intensity Pulsed Ultra Sound:低出力パルス超音波)の音圧効果により、骨折部位の骨の形成を促進し、骨癒合期間を約40%短縮できます。
メーカーの製品説明 から引用
オステオトロンの施術費は1回1,100円となります。(この他初診時には初診料1,500円、2回目以降は施術料700円が加算されます。)
オステオトロンVで骨折治癒なら下高井戸の大澤整骨院(世田谷区) から引用
超音波骨折治療器は、通販サイトで普通に販売されています。
膝蓋骨は種子骨である
膝蓋骨は、人体の中で最大の種子骨です。「種子骨(しゅしこつ)」の意味は、医療関係者などでない限り馴染みがないと思います。
種子骨(しゅしこつ、英: sesamoid bone、ラテン語:Ossa sesamoidea)は、筋肉や腱の中に形成される骨である[1]。多くの場合、骨の歪に応じて形成される[2]。
Wikipedia から引用
役割として、頻繁に移動する部位(手や足)に生じ、腱や靱帯の方向を変える滑車のようにふるまい、骨と腱の間の摩擦を減らし、筋力を伝達する腱の能力を高める[1]。また、脱臼するのを防いでいる[3]。骨化の程度はまちまちである。
(途中省略)
膝の場合、大腿四頭筋の腱部分に存在する膝蓋骨が種子骨[2]
種子骨は、特殊な骨です。膝蓋骨は、大腿の前面の筋肉が下肢を持ち上げる”つながり”の途中に存在しています。
種子骨障害
膝蓋骨骨折とは関係ありませんが、バスケットボールで良く生じる拇趾球(足の親指の付け根)に痛みが出る種子骨障害があります。下記の記事をご覧になると、種子骨の働きについて理解が深まるかもしれません。

膝蓋骨の動き
「膝関節の機能解剖③~膝蓋骨~ | imok Academy」から転載します。
上下の動き | 完全伸展位から完全屈曲位までに、8mm~10mm移動。 |
左右の動き | 完全伸展位において、8mm~20mm移動。 |
回旋の動き | 完全伸展位から屈曲130度までに平均6.2度外旋。 |
傾斜の動き | 膝完全伸展位から屈曲115度までに平均11.4度内側に傾斜。 |
膝関節は回旋(大腿骨に対して下肢が回旋)できます。回旋したときの膝蓋骨の動きは、上の説明で省略されています。
膝蓋骨は、少ししか動かないのだけど、その動きで全体のバランスを取っています。
膝関節を固定しても、膝蓋骨を完全には固定できない
膝蓋骨は皮膚の表面近くに位置しているので、大腿四頭筋に力を入れると、膝蓋骨が少し上がる(股関節側に移動する)のを誰でも簡単に確認できるでしょう。
つまり、膝が曲がらないように固定したところで、膝を伸ばしたままで膝蓋骨を動かせることを意味します。
このことを理解すると、下記の禁忌事項の理解がより深まると思います。
急性期を過ぎ、受診したのちは、保存療法または手術療法が選択されます。
膝蓋骨骨折における禁忌事項とは? から引用
いずれの場合も、早期には「ニーブレース」と呼ばれる膝関節伸展装具を装着します。
過度の大腿四頭筋の収縮を抑制するためにも、荷重制限がかけられる場合や、荷重が可能であっても膝関節は伸展位での荷重が原則です。
間違っても、膝を曲げて歩くようなことがないようにしましょう。
手術後で固定した後であっても、早期では骨の転位などのリスクもあるため、要注意です。
機能解剖学
膝蓋骨には大腿四頭筋(大腿直筋/外側広筋/内側広筋/中間広筋)が付着しているので、膝関節を伸ばしたままでも「大腿四頭筋に力を入れると、膝蓋骨が少し上がる」のはすでに説明しました。
この構造と動作を目で見て確認することができます。下記の動画の5:50〜8:30では、膝の伸展が説明されています。ご覧になれば、大腿四頭筋と膝蓋骨の関係が良く分かると思います。
リハビリテーション
膝蓋骨骨折に対するリハビリテーションにおける治療目標は、
膝蓋骨骨折の保存療法に対するリハビリテーション方法は? から引用
1.疼痛
2.関節可動域制限
3.大腿四頭筋の筋力低下
これらを生じさせないことです。
”大腿四頭筋”が直接関与しているので、筋力低下が心配されるのは十分に納得できます。しかし、”大腿四頭筋”以外は? スポーツが治療目標に含まれるなら、もっと複雑な目標になるのかもしれません。
膝蓋骨は膝関節を固定していても動かせるので、リハビリテーションはとても慎重に開始されます。
保存療法を行う上での注意点は、骨折部の転位を助長しないように進めることです。
特に大腿四頭筋による強力な牽引力は避けなければならず、荷重位での膝関節の屈曲だけでなく、自動運動における膝関節の屈曲に至るまで、早期は膝蓋骨に作用する離開ストレスを極力軽減した中で実施します。
膝蓋骨骨折の保存療法に対するリハビリテーション方法は? から引用
実際、固定期間は膝関節そのものには何もせず、固定期間が外れても徐々にリハビリテーションを進める印象です。
保存療法では、前述の通り、ニーブレースなどによる膝関節伸展位での固定が原則となります。
おおよそ4週間程度が目安となり、この期間は、関節運動や荷重訓練は行わず、足関節や股関節などの隣接関節の筋力増強に努めます。4週以降、徐々に関節可動域訓練や荷重訓練を開始します。
関節可動域訓練は、0〜60°までのように最初からフルレンジでなく、徐々に進めていきます。
荷重訓練は、ニーブレースを装着している中で、伸展位での荷重が許可されます。
また、SLRなどを利用した大腿四頭筋の強化は積極的に行いましょう。6週〜8週ごとになると、関節可動域訓練も疼痛に合わせて最大レンジまで行います。
膝蓋骨骨折の保存療法に対するリハビリテーション方法は? から引用
また、荷重訓練もニーブレースをオフにして荷重訓練や歩行訓練を進めます。
筋力訓練に関しても継続して大腿四頭筋の強化に努めましょう。
引用文中にある”SLR”とは、Straight Leg Raising の略であり膝を伸ばしたまま脚をゆっくり上げ下げする運動です。膝関節を動かさずに(大腿四頭筋に急激でない力を入れて)大腿四頭筋のテンションを維持させたままのトレーニングです。
膝関節筋
骨折の治療のために固定することで、それまで正常であった組織が不調になるかもしれません。例えば、膝関節筋(しつかんせつきん)は小さな短い筋肉で、膝蓋骨とは直接つながっていません。
しかし、膝関節の固定により柔軟性が失われる可能性があります。
下記の動画をご覧になれば、膝関節筋の働きが良く分かると思います。
膝関節筋は一例に過ぎず、膝関節を固定することで本来の動きを束縛される組織が多数あります。固定期間が終了しても、本来の動きを(一時的に)取り戻せない組織があるかもしれません。
わたしは膝関節筋の存在を感じられないし、不調であっても気が付くことができません。
このような問題は、リハビリテーションを手伝ってくれる理学療法士や作業療法士の腕前が発揮される場面だと思っています。
プロフェッショナルな姿勢
チームメイトのチームに対する受傷後の挨拶に感動しましたが、ここに公開するワケにいきません。
代わりに、良く知られている内容かもしれませんが、NBA選手のインタビューを抜粋します。
「結局は楽観しているよ。あまり先のことは考えていないし、過去を振り返ることもない。今日のこと、そして毎日をよりよくすることに集中している」
ビクター・オラディポが負傷後初の公式会見「先のことも過去も考えず、今日に集中」 から引用
NBAのスタープレイヤー、ビクター・オラディポは、2019年1月末に右ひざの大腿四頭筋腱を断裂しました。上の引用は、受傷から約20日の言葉です。
大腿四頭筋腱の断裂は、予後が心配な重傷です。だけど不安に支配されることなく、プロフェッショナルな姿勢を貫いています。
最近のインタビューで、オラディポは「一日中ベッドにいたら、本当に狂っちゃうよ」と話した。
リハビリ中のビクター・オラディポ、トレーニングテーブル上でドリブル から引用
「これは1つのプロセスであり、僕はそれを受け入れたんだ。この期間に多くを学び、大きく成長する。その成長を楽しみにしているんだ」。
手術してから約6週間後にはシュートの動画を投稿しています。順調そうではありますが、まだいつ復帰できるか分かっていない状態です。
固定具を着けたオラディポが大きなボックスに座った状態でトップ・オブ・ザ・キーからショットを成功させ、「歩く前には這わないといけない」とカメラに向かって言うと、ウィングから立った状態でショットを決め、「走る前には歩かないといけない」と話し、最後に右コーナーからショットを決め、「どちらにしても、自分は壊れない」と語って締めくくった動画を投稿した。
右ひざを手術したビクター・オラディポが固定具を外しての歩行を開始 から引用
(しかし、まだ下半身が使えない状態なのに、正確なロングレンジのシュートを放てるとはね・・・)
コメント