スポーツでは、カラダを使った動作でいろいろなことを行いますが、動作を言葉で説明しても、なかなか伝わりません。
スポーツオノマトペとは、スポーツにおいて、コツの伝達にオノマトペを使用することを指します。オノマトペとは、擬声語や擬態語のことです。
この記事では、スポーツオノマトペの研究について紹介します。
これまでオノマトペを使っていなければ、意識してオノマトペを使うことでコミュニケーションが上手くいく期待が持てます。これまで意識せずにオノマトペを使っていたのなら、オノマトペの効果を理解した上で、より効果的にオノマトペを利用できると思います。
あなたのスポーツシーンでオノマトペが活用されれば、よりスポーツの愉しさが広がるでしょう。
本記事を最後までご覧になり、あなたの参考になりましたら幸いです。なお、本記事には、個人的な感想が含まれますので、すべての方に当てはまるのものではありません。
長嶋茂雄氏は自然にオノマトペを使っていた
ミスターは、天才的なプレーと同居して、奇妙な言動が多かったです。サバの漢字の説明が「魚へんにブルー」だったり。
プレーが天才であるがために、常人からかけ離れた言動が”天才特有なモノ”として片付けられている気がします。
しかし、ミスターの使用するオノマトペを真剣に捉えてみると、”コツを伝授するための、工夫された表現”だったのかもしれません。
ダッ パーンッ(自らトスを上げて打撃指導。押し出す側の手の動きを表現)
パアッ ブワーッ(ボールを巻き込んで、腰の回転で豪快にスイング)
伝説の長嶋語 「魚へんにブルー」で鯖、「失敗は成功のマザー」- スポニチ
バッティングの感覚的な動作をオノマトペにすることで、バッティングのタイミング/カラダの使い方/フォロースルーの大切さについて、これ以上簡潔に表現することができるでしょうか。
東海大学の研究概要
東海大学体育学部生涯スポーツ学科、吉川政夫教授の研究グループは2013年、バイオメカニズム学会で「運動のコツを伝えるスポーツオノマトペ」を発表しました。概要から抜粋すると、
オノマトペとは擬音語・擬態語を意味するフランス語である。・・・スポーツ領域で活用されている擬音語・擬態語をスポーツオノマトペと名付けた。・・・運動の「コツ」を表現する際の言葉として使用されることが多い。・・・パワー、スピード、持続性、タイミング、リズム・・・スポーツオノマトペの導入効果・・・可能性について言及した。
運動のコツを伝えるスポーツオノマトペ
音の特徴について、分類、調査されていて、抜粋すると、
・・・大半が、促音(ッ)、撥音(ン)、長音(ー)、語尾の「り」などの特殊拍のいずれかを伴っている場合が多いか、もしくは音節が反復されていた。
・・・
促音(ッ)のオノマトペ
・・・サッ,ササッ,スッ,スーッ,シュッ,パッ,ヒュッ,ガッ,タッタッなど.・・・
・・・バスケットボール・・・などの球技では、テンポの良いパスを出す手や足の動作や素早い身体の切り替えを示す。・・・
・・・
語末に「り」の付くオノマトペ
・・・動作の意味として、ゆっくりした回転、柔らかい動作・・・フワリ、クルリ、コロリ、ピッチリ、ポロリ・・・
こうして分類されてみると、ただただ表現の妙に感心します。共有できるオノマトペがあるのなら、積極的に使うことで動作のコツを簡潔に伝えられる気がします。
論文には、使用者による感想も載っています。
スポーツオノマトペの長所
a. 言葉で言い表せない複雑な動作内容や微妙なニュアンスも簡単に説明できる.
b. スポーツオノマトペを使用した指導内容は,一度覚えたら次の機会でもその内容を忘れずに覚えていられる.
c. 複雑な動作やコツを学習する際,そのときの運動内容をスポーツオノマトペに置き換えて覚えると効果がある.
d. スポーツオノマトペを発声して運動を実践すると,動きのリズムの把握や筋力の発揮がしやすくなる.
e. オノマトペを使用した運動の説明はわかりやすく,興味がわく.
f. オノマトペの説明は印象深く記憶に残りやすい.
最後の方は、多少無理して追加したような気がしますが、全体として納得できます。
スポーツオノマトペは、微妙なニュアンスを伝える適切な表現で、再現に役立つ。学習段階におけるコツの表現にも有効。動作時のカラダの制御が自然にできる。
といった感じでしょうか。
日本語はオノマトペが多い言語
日本語はオノマトペが多いらしいです。
おわりに
わたしの経験上は、オノマトペを使用する指導者の教育を受けたことがありません。
こうして、オノマトペの価値を知ると、スポーツオノマトペを多用するような楽しいコーチと出会ってみたかったです。
自分が身に付けている動作について、オノマトペを使用して記述したいと思いました。